
「コンタクトをつけると目が痛くなってきた。外すと少し楽になるから大丈夫かな」
「昨日から目が充血しているが、仕事が忙しくて眼科に行けない。目薬をさせばいいか」
「コンタクトをつけたまま寝てしまった。翌朝から目が赤くて痛い。コンタクトをはずしていたら治るか」
このような判断が、深刻な視力障害につながるケースがあります。角膜炎は「時間単位で悪化」することがある、眼科的な緊急疾患です。「様子を見よう」「明日眼科に行こう」という24時間の遅れが、視力を左右することがあります。

角膜炎が「緊急疾患」である理由
角膜は直径約11mmの透明な組織で、光を網膜に届けるための「レンズ」として機能します。わずか0.5mmの薄さながら、表面は外界の微生物にさらされています。
角膜炎(角膜の炎症・感染)が恐ろしいのは、その進行速度にあります。細菌性角膜炎は「24〜48時間で角膜潰瘍が深くなる」ことがあります。深い潰瘍が治癒しても白い瘢痕(角膜混濁)が残り、視力低下が不可逆的になることがあります。最終的には角膜穿孔(角膜に穴が開く)、眼内炎による失明という最悪のシナリオもあり得ます。
これは決して「脅し」ではなく、臨床の現場で起きていることです。「目が痛い・充血」をコンタクトレンズ使用後に経験したら、その日のうちに眼科を受診することをルールにしてください。
角膜炎になりやすいのはどんな人?
コンタクトレンズ使用者(最大のリスク群)
角膜炎全体の約70〜80%にコンタクトレンズの関与があるとされています。特に次のような使い方をしている方は感染リスクが極めて高いです。
| 「これをやったら危ない」NGリストコンタクトをつけたまま寝る(使い捨て1日タイプも例外なし)コンタクトを水道水で洗う・すすぐ(アカントアメーバ感染の最大要因)コンタクトをつけたまま水泳・入浴・シャワーをする2週間タイプを1ヶ月以上使い続けるケースを水道水で洗って自然乾燥させる目が少し痛いけどコンタクトをつけたまま仕事を続ける |
「コンタクトを外せば治る」は危険な判断
コンタクトを外すことで一時的に症状が和らぐことがあります。これは「コンタクトによる物理的な刺激がなくなった」だけであり、感染(細菌・アカントアメーバ)が解消されたわけではありません。
角膜炎の怖さは「自覚症状の波」にあります。細菌性角膜炎では「少し楽になったかな」と思った翌日に急激に悪化することがあります。アカントアメーバ角膜炎では、初期は「目がゴロゴロする・少し痛い」程度ですが、1〜2週間後に激痛・重症化することで知られています。
コンタクト使用後の目の痛み・充血は「コンタクトを外して様子を見る」のではなく、「外したうえで当日中に眼科を受診する」が正しい行動です。
角膜炎の種類と見分け方
細菌性角膜炎(最多・最速に悪化)
黄色ブドウ球菌・緑膿菌などが原因。膿性の目やに・充血・激しい目の痛み・まぶしさが特徴。コンタクトの誤った使用から発症することがほとんど。
アカントアメーバ角膜炎(最難治・失明リスク高)
土壌・水道水に生息する微生物「アカントアメーバ」による感染。「コンタクトを水道水で洗う」「コンタクトをつけたまま水泳」が最大のリスクです。初期は軽い違和感程度なのに気づくのが遅れやすく、通常の抗菌薬が効かないため治療が非常に難しい。最終的に角膜移植が必要になることも。
ヘルペス性角膜炎(再発しやすい)
口唇ヘルペスと同じウイルス(HSV-1)が目に感染。樹の枝状の潰瘍(樹枝状潰瘍)が特徴的。疲労・風邪・紫外線で再発しやすい。ステロイド点眼薬が禁忌のため、自己判断でステロイドを使うと急激に悪化する。

今すぐ眼科に行くべき症状
| これがあれば当日中に眼科へ(絶対に様子見NG) ①コンタクト装用中または外した直後から目に強い痛みが出た ②目が充血している+目やにが出ているまぶしくて目が開けられない(羞明) ③黒目(角膜)の一部が白く濁ってきた視力が急に落ちた・ぼやける ④コンタクトをつけたまま寝た後からの眼の症状 |
目薬(市販品・処方箋なし)で角膜炎を治すことはできません。抗菌点眼薬・抗ウイルス薬・抗アカントアメーバ薬など、原因に応じた処方薬が必要です。また、アカントアメーバ角膜炎やヘルペス性角膜炎にステロイド点眼薬を使うと急激に悪化するため、眼科での診断が不可欠です。
治療について
細菌性角膜炎
フルオロキノロン系抗菌点眼薬などの抗菌点眼薬を頻回(重症では1〜2時間おき)に投与します。塗抹標本検査や培養検査で起因菌が判明したら、より適切な薬剤に変更します。
アカントアメーバ角膜炎
PHMB・クロルヘキシジンなどの消毒液を毎時間点眼します。治療は数ヶ月〜1年以上に及ぶことがあり、最重症例では角膜移植が必要です。
ヘルペス性角膜炎
アシクロビル眼軟膏・バラシクロビル内服が基本治療です。ステロイドは上皮型には禁忌です。再発を繰り返す方には長期予防療法が必要な場合もあります。
よくある質問
| Q. コンタクトをやめれば角膜炎は治る? |
| A. コンタクトをやめるだけでは治りません。感染が起きている場合は適切な抗菌薬・抗ウイルス薬の投与が必要です。コンタクトをはずすのは「これ以上悪化させない」ための第一歩であり、そのうえで眼科受診が必要です。 |
| Q. 目が痛いけど仕事で眼科に行けない。市販の目薬で様子を見ていい? |
| A. コンタクト使用後の強い目の痛み・充血に市販の目薬は効果がありません。特にアカントアメーバ角膜炎は初期症状が軽いため見過ごされますが、1〜2週間で急速に重症化します。「仕事が」「明日には」という判断が後悔につながることがあります。可能であれば昼休みや当日の受診を強くお勧めします。 |
| Q. 一度角膜炎になったら、またコンタクトを使える? |
| A. 細菌性角膜炎・ドライアイ関連の角膜上皮障害であれば、完治後に適切な使い方でコンタクトを再開できる場合が多いです。ただし感染リスクの高い使い方(就寝装用・水道水での洗浄など)は絶対に避ける必要があります。アカントアメーバ角膜炎は完治が難しく、コンタクト中止を勧められることが多いです。 |
京橋・東京駅近くで「コンタクトをつけると目が痛い」方は「京橋いしづち眼科」へ
当院では細隙灯検査・フルオレセイン染色・必要に応じた塗抹標本検査で角膜の状態を正確に評価します。当院理事長は感染性角膜炎診療ガイドライン第3版の作成委員長をつとめ、日本眼感染症学会評議員であり、感染性角膜炎の診療に豊富な知識と経験を持ちます。また、アカントアメーバやヘルペスを検出するためのPCR機が院内に設置され、迅速に診断します。
「急に目が痛くなった」という場合もできるだけ速やかにご来院ください。東京メトロ銀座線「京橋駅」1番出口から徒歩1分、JR「東京駅」八重洲南口から徒歩6分。
まとめ
コンタクトをつけると目が痛い・充血するという症状は、角膜炎の初期サインである可能性があります。「コンタクトを外せば治る」「様子を見よう」という判断は、角膜炎を見逃して重症化・視力低下につながるリスクがあります。コンタクト使用者の目の痛み・充血は、当日中に眼科を受診することが原則です。市販の目薬での自己対処は効果がないばかりか、診断を遅らせる可能性があります。
| 参考文献・参考情報 |
| ・日本眼科学会「感染性角膜炎診療ガイドライン(第3版)」 https://www.nichigan.or.jp/Portals/0/resources/member/guideline/infectious_keratitis_3rd.pdf ・日本コンタクトレンズ学会「コンタクトレンズ診療ガイドライン」 https://www.nichigan.or.jp/member/journal/guideline/detail.html?itemid=298&dispmid=909 |

